実行ファイルの作り方

実行ファイル

さて、今までHSPのソースコードをせっせと組んできたわけですが、このままではただのソースコードでしかありません。HSPがインストールされていない環境では実行することができません。それがなくても動く普通のプログラムとして、「実行ファイル」として完成させましょう。

実行ファイルというのは、拡張子が.exeになっている機械語に翻訳された状態のプログラムが入っているファイルのことです。ソースコードというテキストのままでは、他のHSPの入っていないコンピュータでは実行できません。しかし、機械語に直した実行ファイルならば、Windowsが入っているコンピュータ全てで動かすことが出来ます(実際はWindowsのバージョンにも少し影響されます)。

で、肝心の作り方ですが、実に簡単です。キーボードのctrlを押しながらF9を押すか、メニューの[HSP]-[実行ファイル自動作成]を押してください。これで、.hspファイルと同じフォルダにhsptmp.exeという実行ファイルが出来ているはずです。試しに開いてみれば、今までコツコツ作ってきたデジタル時計が、起動するはずです。

後は好みによって実行ファイルの名前を変えたり、アイコンを書き換えたりすればオリジナルアプリの完成です。

プリプロセッサ

しかし、正直毎回実行ファイルの名前を書き直すのは面倒です。実は、「プリプロセッサ」なるものを使う事によって、実行ファイルの設定をすることが可能です。

プリプロセッサとは、コンパイルの仕方をコンパイラに命じるための命令です。例えばこれから使う#packopt命令は、実行ファイルを作るときコンパイラにファイル名はこうしてね、何ていうふうに命令を出すことが出来ます。

	#packopt name "clock"
	

この1行を先ほどのデジタル時計プログラムの先頭に追加し、もう一度実行ファイルを作りなおしてみてください。実行ファイルの名前が最初からclock.exeになっているはずです。

プリプロセッサにはほかにも、#defineや#includeなど様々なものがあり、実行ファイルを作る時のオプション以外にも様々なことができます。

画像ファイルをパックする

このようにして実行ファイルを作成してしまえば、あとは使っている必要なファイル(今回は時刻表示の画像ファイルとタイマーの音声ファイル)さえセットになっていれば、プログラムがちゃんと動作します。

また、#pack#epackを使う事で、データファイルを実行ファイルに埋め込んでしまうことが出来ます。前者はそのままの埋め込み、後者は暗号化して埋め込みます。こうすると、実行ファイル単体で動くようにできます。

ただし、中には埋め込むと使えないファイルもあるので注意が必要です。逆に言うと、picload等で読み込む画像ファイル、mmloadで読み込む.wav、そのほかbloadやnoteload(これはまたの機会に紹介しますが、気になる方は例によってヘルプを参照して下さい)で読み込む.txtファイルなどくらいしか埋め込めないと思っておいた方が良いでしょう。

	;実行ファイル生成オプション
	#packopt name "clock"
	#epack "number.png"
	#epack "alt.wav";★wav以外のサウンドは埋め込むと使えないので注意
	

これをデジタル時計のソースコードの先頭にくっつけて実行ファイルを作成すれば、データファイルなしで、実行ファイルだけで動くようになります。

インターネット上などに自作のプログラムを公開する時には、実行ファイル本体、使用しているデータのファイル、それからマニュアルを添えて、圧縮ファイルにしてインターネット上にアップロードするのが基本です。こんな感じに。readme.txtというのは、マニュアルのようなものです。使い方や著作権情報などを書いておくのが普通です。

HSPで作成したプログラムについては、その著作権の全てがプログラム作成者にあることになっています。なので、自由にフリーソフトとしてもシェアウェアとしても公開することが出来ます。更にHSPで作りましたとマニュアルに明記する必要もありません(もちろん書いてもokです)。実行ファイルの名前やそのアイコンも自由に変えることが出来ます。

お疲れ様でした!

以上をもちまして、「HSPプログラミング入門編-デジタル時計を作る 」は終了です。

ただのタイマー付きデジタル時計ですが、作っていく中でHSPでプログラミングの重要な知識をほぼ網羅したつもりです。正直、あとはヘルプを見ながら「こんな命令が無いかなー」「この命令にはこんな使い方があるのか」「こんな命令もあったのか」なんて風にしていきながらプログラミングを進めて行けば、すぐにでもゲームやツールを作ることが出来ます。

また、インターネットでHSPについて検索すれば、ゲームなどのサンプルはうじゃうじゃ出てきます。また、便利な裏技的なものも沢山インターネット上に載っています。

これから先、暫くclock.hspを改造してみるのも良いでしょうし、何かアイディアがあるのなら、早速プログラムを組んでみるのも良いでしょう。または、よく解らん、という部分について、ソースコードをいろいろ組んで実験・検証してみるのもいいかもしれません。

続く初級編ではゲーム制作の一例として、簡単なゲームを一本仕上げます。中級編では、更に高みを目指すために欠かせないWinAPIやHSPのプラグイン、さらにCOMなどを紹介します。

コラム:アプリの公開の仕方

自作のアプリを公開するためには、様々な方法があります。webサイトを作成してそこに置くこともできますし、窓の杜やVectorに登録してアップロードすることもできます。その際、公開する形式にも種類があります。

HSPのマニュアルには「ユーザーがHSPを使って作成したオリジナルのソフトウェア(実行ファイル)の権利は、 それを作成したユーザーに属します。」と書かれています。つまり、HSPで作成したプログラムは好きな形式で自由に公開することができます。もちろん、HSP以外のデータやDLLを使っている場合は、それらについてはそれぞれの作成者に著作権があるので、確認が必要です。

一番多いのは「フリーウェア」でしょう。誰でも無料でダウンロードして使用出来ます。ただ、著作権自体は作成者が保持しているので、再配布や二次使用に関する制限などができます。逆にダウンロードを有償にする場合は「シェアウェア」となります。完全に著作権を放棄してしまう場合は「パブリックドメイン」といいます。また、書作権放棄だけでなくソースコードまでも公開してしまったものを「オープンソース・ソフトウェア」、略してオープンソースなどと呼ぶこともあります。

個人が趣味で作ったプログラムで著作権の問題が発生することは、非常に稀なので、そこまで気にすることはないと思います。著作権に関して触れていないテキストが付属されているフリーソフトが多いのも事実です。

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